私はネットリサーチの黎明期から携わって来ましたが、振り返ってみると良い面と悪い面があったように思います。
良い面は手軽に早く安く大量の生活者情報が取れるようになり、動画や音声などの活用や、インタラクティブ性を活かした色々な調査が可能になったことがあります。
悪くなったのはリサーチの価格や納期が1/4~1/5まで急激に下がり、それを実現するための行き過ぎた自動化や効率化によって、専門サービスとしての技術力やノウハウがなくなり、設計不足のリサーチが増えてしまったように思えることです。
私達がもっと時間をかけてクライアントと相談し、もっと良く考えて役に立つリサーチを提供しようとしても、今の市場価格と納期ではそれが出来ません。
そして、ネットリサーチの早さと安さに押されて、専門サービスを提供してきた従来型のリサーチ会社が沢山なくなってしまったのは不幸なことだったように思います。
当社は伊藤忠系シンクタンクの社内ベンチャーとして、1998年にネットリサーチ事業を始めました。
そこから7、8年は数社のベンチャーが取組んでいたのですが、当社の様にリサーチ経験からこの市場に入った会社では、リサーチとは何かとか、リサーチにとって大切なことは、という価値観というか拘りがあって、そこの基本を大きく変えられないところがありました。
しかし、リサーチ業務に携わったことのない企業や創業者が、如何にすれば事業を大きくできるかを考えた時に、システム化と自動化による早さと安さの訴求になり、1番低い価格と1番短い納期が市場の標準になって、いつの間にか先進国で日本のネットリサーチが1番安くなっています。
それでもお客様の意思決定に役立つ良いリサーチが提供できて、働く社員も自信と誇りを持って働ける環境が作れれば良いのですが、いまのリサーチ業界には多くの歪みが出ているように感じています。
毎日7、8件もの調査の依頼を行う多頻度回答や、数時間で集める短時間回収、予備調査は2~3ポイント(円)で、本調査でも1問で1~2ポイント(円)という極端に低い謝礼で、リサーチャーも調査設計に必要な時間が取れない状態では、良いデータの回収もパネルの維持もできません。
この歪みは市場環境から来ているので1社ではどうにもならず歯がゆいですが、当社は自社で出来る範囲で高品質で専門的なリサーチサービスが提供できるように務めたいと考えています。
そのために、独自の「テキストマイニング(TextVoice)」や「アンケートデータベース(MyEL)」の構築で固定収益を作り、リサーチワークに少しでも余裕を作り、リサーチャーの育成にも注力して参ります。
小さくてもそんなリサーチ会社を必要としているお客様もおられると思うので、藻掻きながらも品質向上に向かって頑張って行きますので、これらかもよろしくお願いします。
マイボイスコム株式会社 https://www.myvoice.co.jp/
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