私は伊藤忠系シンクタンク(現:伊藤忠テクノソリューションズ)で15年ほどリサーチャーをやり、1999年に社内ベンチャー制度でマイボイスコムを起業して、ネットリサーチに22年携わってきました。
リサーチャーの時には、郵送調査、訪問調査、電話調査、グルイン、会場調査、文献調査、統計調査、海外調査等何でもやりましたので、オフライン調査とネットリサーチの両方を体験したことになります。
両方のリサーチ環境に携わった経験のある方も少ないと思いますので、その違いや現在のリサーチ市場の課題などを思いつくまま書いてみます。
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ネットリサーチがなかった1990年代までは、色々なオフラインの調査手法を組み合わせながらお客様のリサーチ課題に対応していましたが、ネットリサーチが普及することでその時間とコストが大幅に削減されました。
例えば郵送調査では、まず関連する統計や文献を集めて、日経テレコンで関連する記事なども収集して、お客様とも何度も直接打ち合わせをしながら調査を設計し、調査票も良く揉んでから印刷し、ラベル作成、発送、回収、チェック、パンチ、集計、レポート作成という手順で進めていました。
そのため、標準的な案件でも3ヵ月ほどの時間と、300件回収位でも4~500万円ほどの経費がかかりました。
それが現在のネットリサーチでは調査票設計からレポート作成で、30問、500件回収でも期間は3週間で費用は95万円ほどまで下がっていて、時間も費用も郵送調査の1/4位になったというのが実感です。
お客様にとっては、より安い経費で、早く、大量のデータで調査ができるので利便性が4倍も良くなったといえます。
しかし、リサーチ会社の立場では、お客様と課題や調査内容をしっかり相談する時間もなく、とにかく沢山の案件を効率的に回さないと採算が合わない。という厳しい環境で慌ただしく動かざるを得なくなりました。
その結果として、お客様からはリサーチ会社の技術力が低下したとか、リサーチをしても意思決定に役立たなかった、という評価が増えているのは両者にとって何とも不幸な気がします。
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日本のネットリサーチは世界で1番安いと言われていて、それは、ネットリサーチ会社がリサーチの自動化と、早さと安さの過当競争をして来た結果だと思います。
ネットリサーチによって大量のデータの回収や、双方向性の回収や、動画やサイトの活用、回答導線の制御、リッチなテキストの回収等は素晴らしいことです。
しかし、これからは早さと安さの競争でなく、意思決定に役立つリサーチサービスが提供できる様に質的な改善に取り組むことが必要だと思います。
それは1部のリサーチ会社だけでは変えられませんし、お客様の理解を得ることも必要だと思いますが、もう少し余裕のある時間と予算で、もっとお客様とよく相談し、よく考えてリサーチができる環境にすべきではないでしょうか。
当社は創業して23年で40人の小さなリサーチ会社ではありますが、よりお客様に役立つサービスが提供できるように、自社で出来る改善には全力で取り組んで参ります。
新年度もよろしくお願いいたします。
マイボイスコム株式会社
代表取締役社長 高井和久
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