先日、埼玉大学社会調査研究センターが主催の「第5回世論・選挙調査研究大会」という研究会があり、その中で「インターネット調査の課題と可能性」というテーマがあるのが気になって聴講して来ました。
まずは報道機関の取組みの発表でしたが、読売新聞社の方が「電話に出ない人は調査を偏らせるか」、朝日新聞社の方が「ネット調査による選挙予測の可能性について」、毎日新聞の方は「ソーシャル世論の傾向、ツイッター分析を基に」という発表をしてくれました。
これらの大新聞社が世論調査や選挙予測調査のために、インターネット調査や、ツイッター分析の研究をしているということ自体が驚きでした。
世論調査や選挙予測調査では「代表性」と「手続きの正しさ」が最も重視される分野ですから、インターネット調査やソーシャル分析とは対極にあり、感覚的に言うとインターネットやSNSでやるべき対象ではないと思っていました。
しかし、携帯限定者(固定電話を持たない人)が10%を超えて、知らない電話番号の着信には出ない人も増える中で、RDDの信頼性が急速に低下しているのだそうです。また訪問調査や郵送調査も回収率が大幅に下がっています。
米国の携帯限定者は45%で、RDDの回収率は9%という報告もありました。日本でもRDDや訪問調査も環境が悪くなる中で、これまではタブーとも思われていた「インターネット調査」や「SNS分析」も排除せずに検討せざるを得なくなっている印象を受けました。
米国の大統領選挙で、ブッシュとゴアの投票結果を1番正しく予測できたのは、ハリス・インタラクティブ社がインターネット調査で実施した結果で、理論的な補正を正しく行えば世論調査や選挙調査でもインターネット調査が使えるという風潮が米国で起きているとも聞きました。
治安やセキュティ、個人情報に関する意識の変化や、電話環境の変化等で社会調査の環境も大きく変化しています。報道機関の方々から「何とかしなければならないのですが、代表性の呪縛から逃れられないので、、、」という発言が印象的でした。
自分もインターネット調査で、世論調査や選挙調査を安易にやるべきではないと考えますが、インターネット調査以外には改善の方法が見当たらないのかもしれませんね。